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2023/09/29 20:37




「送料割引サービス」を終了します

まずはお知らせです。今まで4,000円以上のお買上げで最大400円、10,000円以上で全額、送料を割引するサービスを行っていました、9月28日で終了させていただきました。そのかわりポイント還元がプラスされますのでマイナスばかりじゃないよ!ということは強調しておきます。それとしれっとゆうパック料金を少し値下げさせていただきました。

さて、なぜ廃止したのか。そもそもなぜPUKUBOOK SUCCULENTSではイッチョマエの送料を徴収しているのか。この記事ではそのあたりを深掘りしておきます。

まずは結論

Amazonは昔から送料ゼロ。大手通販会社も基本的には送料無料。楽天も店舗に送料無料を推奨して店舗さんと大バトルに発展。大手企業だけでなく楽天に出店する我々のような弱小企業でさえも、三木谷さんのような経営の天才が「送料無料のほうが良いんだ」と言うんだから送料無料にするのが正解なのかもしれない。じゃあうちも、送料無料にすべきじゃないの?

結論を先にいうと、送料を無料にはできない(しない)
できないので、なんでできないのかをお客様に理解していただくしか無い
そう思ってここに長々と思いの丈を書き綴ります。

なんでできないのかも長いとしんどいのでまとめると……

送料をギリギリまで安くする努力=仕組みづくりはした
・送料を商品代に含めなくていいので、商品代金をギリギリまで安くしている
・お客様は実店舗に行くのに交通費や燃料費や自分の時間というコストを払っている。オンラインショップでも「交通費」がかかったり「ピックアップサービス料金」が発生するのは理に適っている
・そもそもたくさん買えば1つあたりの送料は安くなる。4000円、10,000円というボーダーに特に意味はなかった。

以下はこれに至るまでに考えたことです。自分の思考をまとめるために書いたもので、全然読んでいただかなくて大丈夫ですが、お付き合いいただけますと幸いです。


配送料はゼロにするのが当たり前?

Amazonや楽天や大手通販会社など、日常的に利用する多くの通販やオンラインショップが「送料無料」なのでもはや当たり前になっていて疑う余地があるとすら思っていなかった「送料無料」。逆に送料がかかるのと小さな怒りすら覚えることも。

でもそれってほんとに当たり前なのでしょうか?


配送料ってなんのコスト? 

一言で「配送料」と言っても配送業者が荷物を運ぶコストだけではありません。スタッフが商品をピックアップして箱詰めする労働力(これはデパートの食料品売場や大型商品を扱うお店ではやってくれます。もちろんそのコストは料金に入っていますが)や箱や梱包資材のコスト。

お店としてはたとえ送料として配送業者の料金しか徴収していなくても、それ以上にかかっている配送コストはお店が最初から割引しているということになります。

実店舗に行って帰ってくるのにお金はかからない?

逆に、実店舗で買い物するときには、商品代金以外にも見えないコストを払っています。まずは店舗に足を運ぶための交通費、駐車場料金、燃料費。自家用車ならその車体価格や維持修理費用。さらに店に行くための時間。これも実際に財布の中身は減っていませんが立派なコストです。オンラインショップは「商品ピックアップサービス」を提供しているサービス会社とも言えるわけです(ネットスーパーなんてまさにその感覚です)。

実店舗に行くのに必要なコストが要らないオンラインショップを利用するのに、それに相当するコストがゼロっていうのは安すぎませんか? お店も商売なんだから、サービスしているなら料金はいただかないと……。


実店舗は家賃や光熱費や改装費がかかっている→オンラインは安くしろという圧力

よく聞く反対意見として「実店舗では家賃や光熱費や改装費などの費用がかかっているのにそれを顧客に請求していない。それが要らないオンラインショップで送料を上乗せするとはナニゴトか」という話。飲食店でテイクアウトだけ「容器代」を請求されると「なんで?(席使わないから回転数上がるでしょ/食器使わないから水道代や人件費浮くでしょ)」と思うのに似たご意見です。

それに対して僕が思うのは、実店舗の商品価格にはもちろんすべてのコストが含まれているってこと。もしオンラインショップでそれが要らないんだとしたら、オンラインショップの価格は安くなるはず。安くできるはず。でも多くのお店でオンラインショップを安くしていないのは以下のような事情があるんだと思います(実店舗ありの話なので詳しい解説は避けます)。

1.実店舗でオンラインショップを運営しているので実店舗のコストは上乗せせざるを得ない
2.オンラインショップは実店舗よりも手間=人件費がかかるので安くできない
3.オンラインショップよりも実店舗を利用して欲しい

ただここまでは「実店舗もある」場合。オンラインショップ専業だったらマジでそういう店舗コストが掛からないので、万単位、いや時には数千万単位の経費が不要です。これはさすがに商品代に入れる必要はありません。

実際に「オンラインショップ専業」のお店は、実店舗のあるお店よりも安くやっているお店のほうが多いです。だって安くできるんだもん。実店舗のあるお店より経費かかっていたら経営が下手すぎます(商品の単価が安い、薄利多売のお店は除きます。駄菓子屋とかスーパーの生鮮食品とか)。もし実店舗のあるお店と同等の価格で出しているオンライン専業店があったら、安くしなくても勝負できるから値段を下げていないという可能性もあります。

うちはもう圧倒的に「実店舗のあるお店」や「Amazonなどのプラットフォーム店」よりも安いお値段で出していきます。かかっていないコストは載せません。それは実際の商品価格を見ていただいたらご理解いただけるかと思っています。


「送料無料」は「送料込み」

Amazonの商品にはAmazon自身が販売する商品と、外部の「セラー」が販売する商品がありますが、外部のセラーが販売する商品もほとんどは「送料無料」です。けど実際にはこの料金の中に「送料」が含まれています。実はAmazonは1つ商品が売れるごとに固定で400円~600円くらいの「出荷手数料=送料」を出品者に請求しています。これを商品代金に含めないはずがない。実際にAmazonにある外部セラーの商品はほぼすべて、最低の単価が1,000円くらいになっています。安いものは複数個セットにしたりして。でないと400円~600円くらいの送料をペイできないから。

送料込みの商品は1個で売っても元が取れるような値付けをしています。つまり2個3個買うと送料を2重で払うことになるわけです。メルカリでよく「まとめ買い」しているやり取りを見かけますが、まとめ買いするとガッツリ安くなるのはそういう理由。なのにメルカリにはまとめ買い機能がなくて1回1回「〇〇様専用」アイテムを出品して買ってもらうという謎の文化※。

はっきり言います。大きな声で言いたい。
「くっそめんどくさい!」

言ってしまえば、こういうのはすべて、送料を商品代に含めてまるで余分なコストがかかっていないかのようにゴマかそうとしてきた悪しき商習慣です。

※調べてみたらメルカリには「まとめ買い機能」が実装されていました。ただ利用者のホントのニーズにはマッチしていない様子……。

※メルカリのもともとの姿のように「個人が個人に一品物を少しだけ販売する」だったら「送料込み」が圧倒的に便利で理にかなっていると思うのでそこはすばらしいと思っています。メルカリが急成長して同種のサービスを駆逐できた理由の1つですね。


とは言え「送料1,500円」も違う気がする

じゃあ配送にかかるすべてのコストを載せて「送料1,500円です」というのも違う気がする。フルフィルメントサービスなどを利用すれば全国一律低価格も実現できる。パッキング作業を効率化することもできる。利用できる業者の中でもっとも料金の安い会社や特別な契約を探して選ぶこともできる。

それはお客様の代わりに「速く効率的に梱包するテクニック」を磨き「最も安い配送手段を選ぶ」というサービスを代行する「商品配送のプロ」にならないといけない。「お客様よりも断然速く、安い手段で遅れるから、我々に配送をお任せください」と言えなきゃいけない。そんな「配送のプロ」が行うサービスだから、それに見合う料金はいただいていいんじゃないか、と。


「1回分の送料」が気軽に買い物するためのハードルになってる

「送料がかかるなら止めよう」って考える人は結構います。僕だって思うことがあります。それは「送料無料が当たり前になっている」ことの弊害でもありますが、そうじゃなくても余分なコストがかかることが利用の足かせになっている事実はあります。

これはバーの「席料」に似ています。バーには「席料」があるので「1杯だけ」のお客様は「2杯3杯」のお客様より割高な料金になります。つまり逆に言うと「2杯以上のお客様を優遇している」わけです。そりゃそうですよね。逆に「1杯しか飲まない」と心に決めたお客様は割高になるのでそもそも店に入りづらくなり、逆に「じゃあ2杯以上飲もう」という後押しになる。お店に対する意欲が強くなる。

他にも、アプリを開発してAppストアに登録したとき、無料アプリだと誹謗中傷に近いひどいレビューばかりになるけど、100円でも取ると逆に良識的なレビューばかりになるという話があります。「お金を払ったのに何だこのアプリは!」と有料のほうが文句が来そうなのに逆です。これは100円という料金がユーザーの指をいったん止めて「それでも使いたい」というユーザーの意欲を高めてくれているということです。

送料が無料のままなにも障害なくお買い物が完了できてしまうと、うちみたいな弱小ショップにありがちな「事情」を理解してもらう機会がなく、そのほうが返ってトラブルが増えるんじゃないかという思いもあります。送料を有料にすると「あれ?」「なんでかな?」といったん立ち止まってもらうことができます。

それはハードルかもしれないけど、あった方がいいハードルだと思っています。


配送業者さんも困っている

これはハードルの話に関連しています。「送料無料」で配送業者が困っているらしいです。なんで? 業者さんは通販事業者からきちんと料金をもらっているんですよね?

それはそうなんですが問題が2つ。1つはその料金が安いということです。大手事業者は数が多いので我々よりはかなり安くしてもらっているはず。その安い料金のしわ寄せが末端の下請け配送業者さんに行って労働環境が悪化して……というやつ。ただコレに関しては、最近のヤマト運輸は過去最高益を更新し続けているので問題がどこにあるのかはもっと深い闇の中ではないかという説もあります。

もう1つの方の問題が重要で、それは荷物を受けるお客さんの態度。送料に対してお金を払っていないから、それを「プロがきちんとやってくれる仕事」と思っておらず態度がぞんざいになっているんじゃないかと。例えば何度行っても不在で再配達を繰り返す(不在連絡を入れない)とか、クレームで声を荒らげたりとか。先のアプリの話と似ていますよね。

これはこれで、そもそも通販の利用回数が爆発的に増えたからというシンプルな理由があるとは思いますが、それでもお客様が買い物したときに「送料は無料なので何もせずに待っててね」と言うか「送料は配送業者さんがプロの仕事をする対価なので心して待て」と言うかによってお客さんの心は変わるはず。それができるのは、お客様にものを販売した我々のような通販事業者だけです。


ZOZOタウンの「送料250円」はむちゃくちゃいい感じの落とし所だと思っている


「ただで商品が届くと思うんじゃねえよ。お前みたいな感謝のないやつは二度と注文しなくていいわ」――。

当初送料500円とかで、Amazonなどが無料なのに対して「高すぎる」とツイートしたZOZOのユーザーに対して、当時の前澤社長がツイッターで反論して大炎上のきっかけとなった一言。大企業の社長としてその言い方は不味かったかもしれないけど、言いたいことはよくわかります。

で、その後いろいろあって前澤さんがツイッターで「じゃあいくらだったらいいの?」とアンケートしたり実際に店舗で試験運用したりして最終的に落ち着いたのが「一律210円」という送料設定(2022年に250円に改定)。買物金額が高くても安くても一緒。

このさじ加減がむちゃくちゃ絶妙で個人的にはとても気に入っています。「配送にはピックアップや梱包や運送会社のお兄さんが運ぶ手間がかかってるんだから(その間ユーザーは何もしないで待ってるだけでいいんだから)ただのはずねえだろ」という前澤さんのメッセージもユーザーに伝わるし「ユーザーさんは大きなハードルと感じず気軽に利用できる」という金額でもある。

本当はこのくらい安く設定できると理想的なんですが、まだまだ売上規模や業務の効率化が追いついていないので、今はまだ難しいかなぁというのが正直なところです。


送料割引サービス(ボリュームディスカウント)を悩んだ結果

最後によくある「1万円以上送料無料」について。鬼のように言われる楽天でさえ「3980円以上」としているので抱えている問題としてはここです。

これは例えば「1万円以上で送料無料」というのは、店舗として1万円以上まとめ買いしてくれるとありがたいという話です。そりゃたくさん買ってくれるほうがありがたいに決まっています。でも問題点が3つあります。

① それが1回の買い物である必要は?
② たくさんってどのくらい? 1万円以上である必然と割引額が固定
③ 送料1回分の割引金額は妥当?

① 少なくともPUKUBOOK SUCCULENTSにとって、配送のときにもっとも手間がかかっているのは「苗を1つ1つ包む作業」です。これは苗のサイズや状態が異なっていて、なかなか効率化できません。それに比べると包んだものの箱詰めやラベル貼りなどはちょろいもの。手間は「購入点数」に比例していて「購入回数」は関係ない。つまり買い物回数は増えても構わないということ。買い物回数は増えていいから、たくさんの苗を継続的に買ってくれる人を優遇したい

② まずそもそも「1万円」とか「4,000円」というボーダー以上買い物しようという意欲。わかりやすいとは思います。ただ、まとめ買いするインセンティブはもともとありますよね。だって1本買うより2本買うほうが1本あたりの送料は半分だから。それと、少なくともPUKUBOOK SUCCULENTSで1万円以上買い物するのは現実的ではありません。ありがたくも実際に1万円以上お買い上げいただける方もいらっしゃいますが、そもそも1万円以上買い物したくても欲しい物がない(数や種類がない)ですよね。ここは今後の課題です。じゃあ4,000円のボーダーは? たしかに後押しには良いボーダーだと思います。でもこんどは4,000円で400円割引されるとそこで終わってしまい、5,000円買おうというインセンティブがなくなっちゃいます。6,000円買ったら600円割引じゃないの?400円なの?損した…って思われがち。6,000円買ってもらった人のほうをもっと優遇したいと思いません? でもそれができない。

③ 最後に4,000円で400円。10%です。売上で10%ということは、仮に原価が60%で利益が40%だとすると、その利益の1/4です。利益25%減。結構大きいと思いません? 大きいんです。PUKUBOOK SUCCULENTSの利益率はそんなに高くないんです!(泣)

というわけで、「謎のボーダーライン」で、「大きな固定金額を割引」し、お客様が「買えば買うほど損をする」、そんな割引サービスは撤廃!代わりにお買い上げ金額に一律で比例するポイントサービスを導入します。


ちなみに「4,000円で400円、1万円で1,000円の送料を割引するサービス」と「一律5%割引サービス」を比較すると、4000円未満、7500~10,000円、2.1万円以上で、「一律5%」のほうが安くなります。しかもこの「2.1万円以上」という金額は1回の買物金額ではなく今までの購入金額の合計ですからね。お客様としてどっちがいい?って訊かれたら間違いなく「一律5%」を選びます。

#このサービス、こうやって分解して考えるとなんでみんなこれをありがたがっているのかまったくわからない謎のサービスじゃないですか? キャッチーで直感的でわかりやすいってだけ。つまりユーザーが騙されているとしか思えない……。


まとめ


長くなりましたが、以上が送料について考えていたことです。

最後まで読んでいただけた方……はさすがにそうそういないとは思いますが、だからこそ、そんなあなたには多大なる感謝の言葉をお食いたいと思います。ありがとうございます!

今後とも色々考えてサービスを改善してまいります。どうぞよろしくおねがいします。